昨今のテレビ業界で未だに意見が二極化しているので、有機ELテレビと液晶テレビのメリットやデメリットについて紹介していきます。
ただ、以前とは違い電気代やパネルの焼き付き・価格など2020年とは変化したこともあります。
そこで今日のお話はこちらになります。
- 有機ELテレビVS液晶テレビ10番勝負!
- それぞれどんな人におすすめのテレビ?
この2つをお伝えしてまいります!
有機ELテレビVS液晶テレビ10番勝負!
両者の最大、そして唯一の違いは
「液晶のバックライトによる発光か?」
「有機ELのパネルによる自発光か?」
という発光方式になります。
しかしいまいちピンと来ずに、有機ELテレビか?液晶テレビか?という問題を調べているうちに、このような比較表を見られた方も多いかと思います。
液晶テレビ | 有機ELテレビ | |
黒の再現力 | 黒に近い色 | 本物の黒 |
薄さ | 標準 | 薄い |
視野角 | 狭い | 広い |
消費電力 | 普通 | 多い |
一ついえるのは、この表ってざっくりとし過ぎですよね(笑)。
それもそのはず。
有機ELテレビ同士を比較するサイトはありますが、有機ELテレビと液晶テレビで比較するサイトって、意外と無いんですよね。
購入を考えているお客様も、
「高い買い物だから、そこも徹底的に比較して!」
というところではないでしょうか?
そこで今回は、
- 数字を交えた超具体的な比較が見たいテレビ好きの人
- 有機ELテレビか液晶テレビかで購入を迷っている人
- 有機ELテレビと液晶テレビ、総合的にどちらが最強か知りたい人
に向けて「有機ELテレビVS液晶テレビ10番勝負」という形でお伝えしてまいります!
平等な目線に立つことを意識し、テレビの画質だけではない総合的な「徹底比較」にこだわりました。
とはいえ、さすがに格安の液晶テレビでは勝負にならないので、4K液晶テレビの最上位モデルと有機ELテレビの最上位モデルの比較ですね。
開幕戦~本体価格~
いきなりテレビの最重要項目である価格からスタートします!
特に売れ筋の55インチ、「SONY ブラビア」それぞれの最上位モデルを例に超具体的な比較をしてまいります。
SONY ブラビア
初値価格(2021年5月) | 現在最安値 | |
XRJ-55X90J(液晶) | 240,866円 | 186,300円 |
XRJ-55A90J(有機EL) | 351,262円 | 291,638円 |
現在最安値は変動し続けるので、一概にはいえませんが、
「値下げ幅は同等なものの、価格自体は液晶が10万円前後の圧勝」
と、判断できます。
「有機ELが安くなってきている」といわれる2021年ですが、まだまだ液晶の勝ちです!
ここでの疑問は、
「その価格ってソニーだけなんじゃないのー??」
というところですが大丈夫です。この法則は面白いくらいに他メーカーにも適用されます。
Panasonic ビエラ
初値価格(2021年5月) | 現在最安値 | |
TH-55JX950(液晶) | 254,548円 | 192,700円 |
TH-55JZ2000(有機EL) | 373,333円 | 287,335円 |
東芝 レグザ
初値価格(2021年4月) | 現在最安値 | |
55Z740XS(液晶) | 229,185円 | 139,501円 |
55X9400S(有機EL) | 340,384円 | 249,800円 |
SHARP アクオス
初値価格(2021年4月) | 現在最安値 | |
4T-C55DN1(液晶) | 198,000円 | 153,500円 |
4T-C55DS1(有機EL) | 336,600円 | 239,500円 |
といったところになります。
つまり、有機ELテレビの購入の際に、
「10万円前後の価格差を肯定する価値があるかどうか?」
を、この後の比較で見極めて頂ければ判断もしやすいということですね。
第2戦~売れ行き状況~
実際、両者、どれくらい売れてるか気になりますよね?
先に結論ですが、「有機ELの勢いこそ凄いものの、4K液晶のほうがそれを上回って売れている」です。
- 主要メーカー55インチ
- 最上位モデル同士
- 同時期発売モデル
を条件に純粋な売上台数で見ても、パナ以外はほぼ液晶テレビの圧勝です。
「型落ちお買い得モデル」「格安4K液晶モデル」をいれたら売上台数の差は更に広がりますね。
しかし、実はテレビ全体としての売上は去年に比べ若干ダウンしていますが、有機ELテレビの売上は200%近くの伸びを見せています。
そして、売上台数ではなく売上金額で見た場合、テレビ全体の25%です。
そのため、売れ行きという観点では「有機ELの売上台数こそ液晶に及ばないものの、勢いは有機ELが上」というドロー判定になります。
第3戦~パネル性能~
最大の勝負ポイントのパネルです。
勝負というか液晶と有機ELの唯一の違いの概念です。
まずは総合的なパネル自体の評価を比較していきます。
そして、これは当然のことながら、「次世代パネル」と呼ばれる有機ELの圧勝です。
例えば、
- テレビ以外のスマホなどでの採用率
- 研究機関や各メーカーが注目している将来性
- そもそもの薄さ
- 自然発光できる
どれをとっても有機ELパネルが上なのは間違いありません。
しかし、テレビにおいては、ひとくくりに「有機ELパネルが最強で液晶パネルはダメ」と決めつけるには無理があります。
理由は、各メーカーが液晶パネルを最強の機能面でカバーしているからです。
では、次からは更に画質を含めた詳しい比較をしていきましょう。
第4戦~画質性能~
有機EL及び液晶パネルの「画質」でのメリットデメリットで比較しますと、
メリット | デメリット | |
有機ELパネル | 完全な黒の表現 視野角が広い 滑らかな表現が可能 | 画面が暗い 白の表現力は劣る 自然光のもとでは見にくい(昼間など) |
液晶パネル | 画面が明るい 白の表現力 | 黒の再現性は劣る 視野角が狭い 画面のカクつき |
バックライトを持つ強みで「明るさ」や「白の表現」には液晶に分があるものの、単純な画質面は有機ELがリードしている印象です。
白の表現力より黒の表現力が視覚的に「美しい」と感じやすいためです。
実際に映像の基盤となる「黒」の力は決定的で、両者のコントラスト比は、
有機EL 100万対1
液晶 5000対1
とも呼ばれています。
しかし、ここに各メーカーの画質機能での弱点のカバーが入ります。
デメリット | カバー | |
有機ELパネル | ・画面が暗い ・白の表現力は劣る ・自然光のもとでは見にくい(昼間など) | ・発光アップ機能(XRコントラストなど) ・低反射機能(ブラックフィルターなど) |
液晶パネル | ・黒の再現性は劣る ・視野角が狭い ・画面のカクつき | ・直下型LED部分駆動 ・IPS液晶 ・倍速駆動 |
液晶は長年培った技術もあって、デメリットを相当カバーしています
特に、「直下型LED部分駆動」はコントラスト面に強く、液晶ハイモデルのみに許された最強機能です。
そして結論ですが、やっぱりここは有機ELの勝ちです(笑)。
なぜなら、
- 有機ELの弱点もメーカー技術によってカバー
- 液晶に搭載している画質機能は当然有機ELにも搭載
しているからです。
例えば、基本となる4K映像はもちろん、ただでさえヌルヌル動く有機ELパネルに、更に「倍速駆動」を搭載しているため手に追えません。
結局画質面は「どちらも綺麗だけど有機ELが綺麗過ぎる」といったところです。
第5戦~機能比較~
画質以外の機能、例えばネット機能や音響回りです。
結論、液晶ハイモデルと有機ELで比較した場合、ここは五分といえます。
仕様確認を見ると分かりやすく、どちらも同等の機能を搭載済みです。
そして当然、
- 映像エンジンなどの消耗度の早さ
- 無線の質、スピーカーの質
- リモコンの応答速度の早さ
この辺にも「液晶パネルだから良い」「有機ELパネルだから良い」と明確な因果関係はないため、完全に五分といえます。
このことから、
「パネル仕様の違いがテレビの本体機能に及ぼす影響は皆無に等しい」
といえるでしょう。
第6戦~寿命・経年劣化・耐久性~
この3つを比較した「パネルの壊れにくさ」という勝負ですね。
寿命 | 経年劣化 | 耐久性 | |
有機ELパネル | 10万時間 約30年以上 | 画面の焼き付き パネルに熱が発生 | 多少柔軟性がある 強いがもろい |
液晶パネル | 60000時間 約20年以上 | 画面が暗くなる 画面に線が出る | 柔軟性はない それなりに強い |
「有機ELパネル第2世代」といわれる、2016年以降は有機ELの寿命の欠点はほぼ克服されています。
ただし、第三者の研究機関などによる発表ではなく、あくまで製造元のLG社の発表です。
ともあれ、これを踏まえれば、テレビ本体の寿命が先にきてしまうため、パネルの寿命自体は両者ともに懸念する必要はほぼないといえます。
しかし、「経年劣化」には大きな開きがあります。
なぜなら、液晶の劣化は寿命間近に起きる問題に対し、有機ELの劣化は常に起きうる問題を抱えているからです。
一応有機ELの最新モデルでは、
- 焼き付き問題自体はそれなりに改善
- 「パネルメンテナンス機能」でメンテ可能
- パネルに放熱シートを採用
とメーカーは機能による改善を計っていますが、根本的には解決していません。
有機ELの発光方式が自発光である以上、ここは物理的に避けては通れないポイントとなります。
物理的な「耐久性」についても同じく問題があります。
両者が同じ衝撃を受けて壊れた場合、
・有機ELはパネル自体が完全終了
・液晶パネルは一部点かないなどに留まり、修理可能
というところで、ここも物理的に液晶が強いです。
パネル自体に柔軟性がある有機ELが多少頑丈かもしれませんが、故障クラスの衝撃の前では正直誤差の範囲かと思います。
総合的に「壊れにくさ」勝負では、有機ELパネルも改善してはいるものの、液晶パネルの圧勝という結論です。
第7戦~重量・厚さ・デザイン性~
「有機ELは軽くて薄い」との売り文句ですが、実際の数値とか気になりますよね。
そこでソニーの55インチ最上位モデル同士を例に比較していきます。
SONY ブラビア
重量 | 厚さ | テレビスタンドあり | |
XRJ-55X90J(液晶) | 17.4kg | 7.2cm | 重量18.7kg 厚さ32.4cm |
XRJ-55A90J(有機EL) | 18.6kg | 4.1cm | 重量20.3kg 厚さ31.7cm |
テレビ本体の厚さは違えど、意外なことに重量は有機ELのほうが重いです。
そしてスタンドを付けてしまえば、両者ともにほぼ違いはなくなりますね。
有機ELのほうが薄いことから、壁掛けには多少有利ですが、液晶も薄いので、ここも気になりません。
サイズ的な差はイメージと裏腹に思いのほか小さいのです。
しかし、結論的には有機ELの圧勝となります。
理由もなんとなく分かるかと思いますが、有機ELパネルの「漆黒の黒」がもうデザイン性の観点から最強だからです。
当たり前ですが、テレビは外観がパネルで大部分を占めるので、有機ELの存在感はやはり液晶に勝っているといえます。
第8戦~電気代~
「液晶は電気代が安く有機は高い」とざっくり知っている方も多いと思いますが、ソニー公表の具体的な数字で比較致します。
SONY ブラビア
消費電力 | 年間消費電力量 | 待機時 | 年間電気代 | |
XRJ-55X90J(液晶) | 208W | 193kWh | 0.5W | 約5211円 |
XRJ-55A90J(有機EL) | 388W | 175kWh | 0.5W | 約4725円 |
これを見ると驚くことに、瞬間的な消費電力こそ有機ELが高いものの、一年トータルで見た消費電力は有機ELのほうが安いのです。
電気代に直結する部分ですので、これは流石に有機ELの勝ち…とはなりません。
理由は、
- 有機ELテレビは省エネ法に基づく年間消費電力の計算をしていない
- 消費電力が高いのに、年間消費電力が安くなる具体的な根拠がない
以上の点から、電気について権威性を持つPanasonicのデータが実際の差分に近くなると推測されます。
Panasonic ビエラ
消費電力 | 年間消費電力量 | 待機時 | 年間電気代 | |
TH-55JX950(液晶) | 219W | 130kWh | 0.3W | 約3510円 |
TH-55JZ2000(有機EL) | 421W | 180kWh | 0.3W | 約4860円 |
まとめると、「液晶のほうが省エネなものの、有機ELもそこまで高くはない」といったところですね。
電気代は利用シーンによって大きく変わりますが、現状は液晶の勝ちというところで落ち着きそうです。
第9戦~サイズの種類~
色々なインチのラインナップですね。ご存知の通り、液晶の圧勝です。
ここは液晶が下に広い分、有利となります。
有機ELは大型サイズのみの展開で最小サイズでも48インチです。
対して液晶は下は8インチから上は80~まで、様々なモデルが販売されています。
これは有機ELパネルの販売にあたり、より高い付加価値で販売したい!というパネルメーカーというかLG社の戦略的な要素が最大の理由です。
「せっかくの有機ELパネルを製造するなら高く買って欲しい!」
といったところでしょうか。
実際に戦略的に成功していることから、パネルを買っているテレビメーカーも歓迎するしかなく、当面はこの流れが続きそうです。
最終戦~それぞれの今後~
先に結論ですが、とりあえずは有機ELの勝ちです。
勢いにのっている有機ELですが、現在もテレビだけに留まらず、スマホやタブレットでの採用が加速化しています。
量産拠点も今後更に拡大が見込め、価格の低下や品質の更なる向上が予想されます。
未来の話となると、有機ELは本当に良い話しか出てこないんですよね。
一方で、液晶は横ばい傾向といったイメージを持っている方も多いと思います。
元はといえば、日本の液晶の正統進化路線は「4K→8K」だったはずです。
しかし、韓国LG社の有機ELパネルの登場により大幅な路線変更を余儀なくされています。
実際に「8K液晶テレビ」と「有機ELテレビ」が同じ価格なら、有機ELが欲しい!という方も多いはずです。
したがって、これからの液晶は「色彩の量子化」や「バックライトのナノ化」など技術革新でどれだけ有機ELに対抗できるか?という方向性にシフトしていきそうです。
どちらの技術もLGやサムスンといった海外メーカーなのが気になるので、日本メーカーにも有機ELを出し抜く液晶技術の革新に期待したいところです。
それぞれどんな人におすすめのテレビ?
徹底比較による10番勝負、いかがだったでしょうか?
最後に10番勝負の結果を踏まえ、「こういった方にはこのテレビがおすすめ」という家電屋の結論をお伝えしてまいります。
有機ELテレビがおすすめな人
- とにかく映像美を求めている人
- スポーツや映画、ゲームをしたい人
- テレビはパネルが全てと考えている人
- 新しいモノを生活にガンガン取り入れていきたい人
- 有機ELパネルに将来性や魅力を感じている人
これら5つに当てはまる人には有機ELがおすすめです!
パネル自体の画質や応答速度はもちろんですが、これに更にメーカーの画質機能をマックスまで上乗せしているので、綺麗でないはずがありません。
焼き付き問題もだいぶ改善され、以前のような有機ELのネガティブなイメージはもうなくなりました。
また、これから有機ELが本格的に普及していく流れから、「時代を先取りしたい!」と考えている人にもおすすめです。
なぜなら、テレビは長く使うものですので。
周りが有機ELテレビなのに自分だけ液晶…というのも少し寂しい気もしますよね。
液晶テレビがおすすめな人
- リビングなどの光が大量に入る場所で見る人
- パネルの焼き付きを気にしたくない人
- 低価格で高画質のテレビを欲しい人
- 有機ELの寿命、電気代などがやはり信用できない人
- 家族みんなでテレビを様々な利用シーンでフル回転させたい人
上記の項目が当てはまる人には液晶がおすすめです!
バックライトによる「明るさ」「白の表現力」は、やはり自然光が邪魔な明るい場所で力を発揮します。
そもそも有機ELに比べられて、「液晶は綺麗ではない」みたいな風潮がありますが、今の液晶、めっちゃ綺麗です。
焼き付きなどもないことから、長時間テレビを運用することにも向いてます。
そして何より、今の液晶は有機ELというライバルの存在から「史上最強コスパの時代」です。
良いモノを安く購入できる、というお得感を大事にされたい方には、今の液晶は本当に良い時期ですので、自信をもっておすすめできます!
どちらもおすすめで、店頭で判断を推奨する人
それでも決めかねている人は、店頭で実際に見ることがおすすめです。
「やっぱり有機は綺麗すぎる」
「これくらいなら液晶でも大差ないな」
といった自分なりの妥協点も見つけやすくなります。
店頭デモはコントラスト表現が強く、どうしても有機ELが有利です。
そこでお客様自身がよく見るチャンネルとかですね。
これを比較してみることで、より後悔のない買い物が出来るかと思います。
まとめ
今回は有機ELテレビVS液晶テレビの比較を10番勝負という形でお伝えしてまいりました。
開幕戦~本体価格~ 液晶〇 有機EL●
第2戦~売れ行き状況~ 液晶△ 有機EL△
第3戦~パネル性能~ 液晶● 有機EL〇
第4戦~画質性能~ 液晶● 有機EL〇
第5戦~機能比較~ 液晶△ 有機EL△
第6戦~寿命・経年劣化・耐久性~ 液晶〇 有機EL●
第7戦~重量・厚さ・デザイン性~ 液晶● 有機EL〇
第8戦~電気代~ 液晶〇 有機EL●
第9戦~サイズの種類~ 液晶〇 有機EL●
最終戦~それぞれの今後~ 液晶● 有機EL〇
偶然にも「4対4の2引き分け」という形で完全ドローという結末でした。
まとめると「画質や将来性は有機ELがリードしているが、総合的には液晶もまだまだ負けていない」といったところでしょうか。
以前行った、有機ELテレビと液晶テレビどっちが欲しいですか?というアンケートの結果です。
有機ELテレビ 51%
液晶テレビ 49%
正直、意外な結果でした!!
綺麗だから有機ELテレビが欲しいというわけではないようです。映像以外で判断しているというところですね。
視聴者様のアンケート結果がほぼ五分だったのも、今さらながら納得致しました。
今回のような徹底比較、機会があれば是非またお届けします!