自宅やオフィスなどで「プリンターを購入する」となると、必ず候補として挙がるのが「キヤノンとエプソンどちらにするか」の問題である。
どちらのメーカーも長年プリンターを開発・販売しており、「両メーカーの機能差」はカタログ上では分かりづらい。
ただ、「メーカーごとの特徴」はかなりハッキリと分かれているので今回は「エプソンとキヤノンの最新式家庭用プリンターの違い」ついて触れていく。
キャノンとエプソンのプリンター比較
プリンターで重要になってくるのはズバリ「インク」「印刷コスト」「印刷速度」「印刷品質」の4つ。
どれだけ早く正確に印刷出来ても「1枚印刷するのにかかるコスト」が高すぎれば、結果意味がない。
かと言って、どれだけ低コストで早く印刷出来ても「出力された印刷物」が悪ければ良いプリンターとは言えない。
プリンターは決して安い買い物ではないので、毎年買い換えるものでは無い。
なので、「自分に必要な機能」と「搭載されている機能」をしっかり吟味する必要がある。
今回の記事では2強メーカーである「キヤノンとエプソンの最新2019年販売モデル」の比較を「プリンタ選びで参考になる基礎知識」をチェックしながら行おうと思う。
インク
文章を印刷する上で欠かせない物として「プリンター用インク」である。インク一つとっても、それぞれのメーカーの特徴が異なっており実に面白い。
まずインクの違いについてだが、
●キヤノンのインクカートリッジ式の上位モデルは独立6色セット(PIXUS XK60)
●エプソンのインクカートリッジ式の上位モデルは独立6色セット(EP-882)
一見するとキャノンもエプソンもインクカートリッジ数は同じだが、インクカートリッジの内容を見てみると
●キヤノンのインクカートリッジ式の上位モデルは独立6色セット(PIXUS XK60)
(ブラック・シアン・マゼンタ・イエロー・フォトブルー・顔料ブラック)
●エプソンのインクカートリッジ式の上位モデルは独立6色セット(EP-882)
(ブラック・シアン・ライトシアン・マゼンタ・ライトマゼンタ・イエロー)
と、かなり異なる。採用したインクにおいてどのような差が生まれるのかは
後の印刷品質の点で触れていこう。
印刷コスト
どれだけ精彩に印刷できたとしても、「1枚あたりの印刷に掛かる費用(=印刷コスト)」がべらぼうに高いと「印刷するほど「印刷コストが安い上位モデル」と比べてコスト面で損をする」事になってしまう。
よく言われる『コスパが良い』とは、「コストパフォーマンスが高い」の略であり「用紙一枚あたりに掛かる費用が少ない」ことである。
上位機種であるキヤノンXK60とエプソンEP-882シリーズはそれぞれ「大容量インクカートリッジ」を搭載できるので、一回あたりの印刷にかかるコストを通常サイズのカートリッジに比べて更に抑えることが出来る。
スマホやデジタルカメラで撮影したデータをL版用紙への写真印刷した場合だと、
●キヤノンのL版写真フルカラーは最安13.8円/枚(PIXUS XK60)
●エプソンのL版写真フルカラーは最安8.6円/枚(EW-M752T)
※それぞれ大容量インクカートリッジ使用時における計算
と、一見すると「エプソンの方がコスパが良い!」と思える。
ただし、エプソンの安値はあくまでエコタンク採用モデルであるEW-752Tの場合。
エコタンクについては以下を参考にしていただきたい。
みなさんは学校や職場などでプリンターを使った事があると思う。 今までは家庭用や小規模オフィスに向いたインクジェット方式と、オフィス向けの大きなレーザープリンターが主であった。 しかし、2016年2月にエプソンが「エコタンク」を採[…]
キヤノンと同じインクカートリッジ式だとL版写真フルカラー最安時20.6円/枚(EP-882シリーズ)なのでコストがかかってしまうので、「同じインクカートリッジ方式」同士であれば、キヤノンの方が「コスパフォーマンスが良い」のだ。
印刷速度
プリンターを使用していて気になるのが「印刷速度」ではないだろうか。
綺麗で精彩な写真印刷を印刷するのには、どうしても印刷時間が掛かってしまうのだが資料印刷やプリント類の焼き増しの際など、オフィス目的で使用する場合には印刷速度が遅いと「まだ資料が印刷し終わらない…」と待ち続けなければならない。
非常に時間が勿体無い。また、最近になって量販店のカタログなどでよく見かける単語が「○○ipm」。
なかなか聴き慣れない単位と思うが「image per minute(イメージ・パー・ミニッツ)」を略して「ipm」で、分かりやすく例えると「1分間の間に何枚印刷できるか」と言うこと。
すなわち「10ipm=1分間に10枚印刷できる」と考えてもらえると分かりやすいはずだ。その点を踏まえた上で、各メーカーごとの印刷速度について見ていこう。
まず、A4サイズの普通紙へのカラー印刷の場合は、
●キヤノンのA4フルカラー普通紙印刷は最速約10.0ipm(XK60)
●エプソンのA4フルカラー普通紙印刷は最速約12.0ipm(EW-M752T)
となる。更に、家庭用でよく使われるであろう写真印刷の速度については
●キヤノンのL版写真フルカラーは約14秒/枚(PIXUS XK60)
●エプソンのL版写真フルカラーは約13秒/枚(EP-882シリーズ)
となっている。印刷速度に関しては「エプソンのプリンターの方が文章も写真も早く印刷できる」と言っても良いだろう。
写真印刷と文章印刷
さて、プリンターで一番重要な「印刷のクオリティ」について。
昔からよく「写真はエプソン、文章はキヤノン」と言われているのを耳にした事があるはず。量販店のスタッフの方に聞いてもほとんどの方がその様に答えるであろう。
値段帯も仕組みもほぼ同じインクジェットプリンターなのに、なぜそこまでハッキリと別れているのだろうか?その点を確認していこう。
それぞれのメーカーの最上位機種(今回はキヤノンXK60とエプソンEP-882シリーズ)は前述のインクの項で説明した違いがあるが、それ以外にも、
●キヤノンはブラック以外にも「顔料系ブラックインク」をカートリッジ式インク採用の全モデルで採用しており、グレースケール印刷(白黒印刷)に強い。
●エプソンは上位モデルで「ライトマゼンタ」と「ライトシアン」の染料系インクを使用しており、写真印刷等のカラー印刷時に滑らかなグラデーションが可能
ざっと挙げるだけでもこれだけ大きな違いが出てきたが、まず「染料系インク」と「顔料系インク」の違いが分からないと「インクが違うだけでそんなに違うの?」だけとしか捉えられないと思うので、簡単に補足しよう。
顔料系インクのメリットとして「紙の表面に定着する」「インクの乾きが早い」「コントラスト」(メリハリ)が強い」という点。
紙の表面にインクを「載せる」ので、発色が鮮やかであり文章の様な「パキッと見やすい印刷がしたい」場合に向く。
さらに「インクの乾きが早い」ということは「印刷してすぐ重ねてもインクが他の紙に映らない」というメリットもあるので、「大量に文章を印刷する」事務所やオフィスには最適だ。
続いて、染料系インクのメリットとして「インクが紙に染み込む」「色再現度が高い」「顔料系インクに比べて出力が早い」という点。
紙自体にインクを「染み込ませる」ので、写真やイラストでよく使われる「色のグラデーション」を再現しやすい。
マーカーペンより水彩絵の具で絵を書いた方が色の再現が豊かだとイメージしてもらうと分かりやすいと思う。
また、「色再現度が高い」についてはざっくり説明すると「元の写真データにどれだけ近くできるか」ということ。
顔料系インクは「コントラスト(メリハリ)が強い」反面、「細かなグラデーションを印刷する」ことは家庭用プリンターでは苦手とするので「グラデーション印刷が得意」な染料系インクは「写真やイラスト印刷に向いている」と言えるのだ。
詳しく書くともっと細かな違いがあるが、これだけの違いがあるので「写真はエプソン、文章はキヤノン」と言われるのも納得できる。
また、プリンターのインク以外にも画質の差が分かれる理由の一つとして「印刷できる解像度」がある。
各メーカーの2019年発売モデルの最上級機種でも
●キヤノンは最大解像度4,800×1,200dpi(PIXUS XK60)
●エプソンは最大解像度 5,760×1,440dpi(EP-882シリーズ)
と、若干ではあるが解像度の違いはある。
dpiは「dot per inch(ドット・パー・インチ)」という「1インチ(約2.54セン辺)の正方形の中にどれだけの点を書けるか」の性能を表した単位であり、スマートフォンの画面表示の性能でもよく使われている。
この数値が高ければ高いほど「クッキリハッキリ見やすい」という事を表している。
L版サイズまでの用紙にスマートフォンで撮影した写真を印刷する程度であればキヤノンの解像度もあれば十分問題ないが、
A4用紙など「L版より大きな用紙」に「デジタル一眼レフなどで撮影したデータ」を印刷する場合にはエプソンの解像度以上あった方が望ましい。
サイズやデザインについて
最後にデザインについて。家庭用であってもオフィスであっても「野暮ったいデザインに大きくて黒かベージュ色の本体」が一昔前のプリンターだった。
最新のキヤノンとエプソンのプリンターは、一昔前のインクジェットプリンターに比べて大きさもコンパクトになり、デザインも洗練された。
どのモデルもWi-Fi対応になり、用紙も給紙トレイ採用のモデルであれば電源ケーブル一本だけで済むのでデスクの上やリビングのラックに設置しても一体感が生まれ非常にスッキリする様になった。
デザイン面でも各社それぞれ工夫や違いがあり、
●キヤノンは直線主体の「先進的かつモダンなスクエア」デザイン。
カラーもブラック/ホワイト以外にシルバーやレッド、ピンクとネイビーとカラーバリエーションも豊富であるので非常にオシャレ。リビングに置いていても似合う。
●エプソンはどのモデルも共通で「角を落としたシンプルで優しさのある」デザイン。
カラーはどのモデルもホワイトとブラックを設定し、一部モデルのみレッドがある。奇抜なデザインではないので、オフィスや家庭どちらも場所を選ばず置ける。
と、それぞれ主旨が異なっているのが非常に面白い。ただ、その反面
●キヤノンは「インクタンク採用モデル」のカラーバリエーションが少ない(ブラックのみ)
●エプソンはプリンタサイズがキヤノンに比べて少し大きい
という短所もそれぞれメーカー持っており、特にエプソンの「本体サイズの大きさに注意したい。キヤノンのXK60の場合は本体サイズが 幅37.3cm x 奥31.9cm x 厚14.1cmであるが、
エプソンのEP-882シリーズの場合は 幅34.9cm x 奥34.0cm x 厚14.2cmであるので幅はエプソンのEP-882シリーズがコンパクトではあるものの、奥行と厚みはが僅かに大きい。
特に奥行きはリビングのラック等に設置する際に少し棚から飛び出してしまう場合がある。
更に両メーカー共に「使用時には排紙トレイを広げる」必要がある事を忘れずに。購入前に必ず設置したい場所で寸法の確認をした方が良い。
(筆者も過去に設置の寸法をまちがえた事があるので)
キヤノンのおすすめ複合機プリンター
キャノンのプリンター、複合機のおすすめを5機種紹介していこう。この5つの中で選べばきっと失敗もない!
TS6330
家庭で必要となる「Wi-Fi経由でのワイヤレスプリント」や「スッキリ見える前面給紙トレイ」の採用はもちろん、スマホアプリで連携すれば「Instagram」や「Facebook」の各種SNSで投稿した写真も印刷ができる。
インクタンクは「染料系インク4色」と、「顔料系ブラックインク」も搭載した独立5色。
細かな文字も濃くハッキリと印刷する事が可能で、「文字も写真もどちらも印刷したい」というニーズに応える一番ベーシックなモデルである。
TS5330
先述のTS6330とは性能が大きく異なり、インクタンク数も「染料系カラーインク3色(一体)」と「顔料系ブラックインク」を採用しディスプレイも「タッチ非対応の1.44型モニター」となっている。
ただ、印刷における最高解像度はTS6330と同じ「4,800×1,200dpi」であり、「Wi-Fi経由のワイヤレスプリント」への対応や「前面給紙トレイ」を採用していた上で店舗によっては1万円前後で購入出来てしまう価格がとても魅力的。
「普段は使わないけど、年末に年賀状を印刷するくらい」などの使い方であれば十分な性能である。
TS8330
「タッチ対応4.3型ワイドディスプレイ」を搭載し、「Wi-Fi経由で電源ON」と「スマートトレイ」に対応している。
例えば「資料を印刷したいけどプリンターから離れているし、プリンターの電源つけてないや…」という際に、スマホやタブレット等からプリンターにデータを送信するだけで「プリンターが自動で起動し、用紙トレイも自動でセットされ自動で印刷してくれる」という優れモノ。
また、キヤノン独自機能として「好きな写真やイラストでネイルシール印刷ができる」という面白い機能も搭載されている。
本体カラーも「ホワイト/ブラック/レッド」と3色展開されており、リビングに設置していても差し支えないデザインなので「文章も印刷するけど、家族で使う事が多い」といった場合にオススメしたい。
XK60
基本機能はミッドレンジモデルのTS8330をベースに、カラーインクの内容を見直し基本のCMY(シアン(青)/マゼンタ(赤)/イエロー(黄))に「フォトブルー/染料ブラック/顔料ブラック」の3色を搭載しており、「メリハリのあるカラー印刷」を得意とする。
特に「フォトブルー」インクを搭載している効果で「インクジェット特有の粒子感(ツブツブした様に見える感じ)」を抑えてくれるので「モノトーン写真や夜景写真」などでその効果がよく分かる。
また、大容量インク使用時におけるパフォーマンスは「印刷速度とコスト面の両方」で「キヤノン製プリンターで最高ランク」。
本体デザインもスクエアを基調とした都会的なデザインで、シルバーのヘアライン加工のパネルがとても上品。
「メリハリのある写真を撮影するので、写真印刷でコントラストにおける妥協はしたくない」というハイアマチュアにうってつけのモデルである。
エプソンのおすすめ複合機プリンター
キャノンのライバル、エプソンのおすすめプリンター、複合機を5機種紹介していこう。
EW-452A
染料系インク3色(独立)に加え、顔料系インクの「くっきりブラック」インクを採用し文字も写真も綺麗に印刷出来る。
また、前面に1.44型の液晶ディスプレイを搭載しているのでパソコンやスマートフォンなどを介さず本体だけでインク残量の確認等も行える機能と上位機種に搭載されている「交換式メンテナンスボックス」も備えている。
インクジェットプリンターはヘッドクリーニング後に排出されたインク液を、従来モデルでは「本体内部」に貯めており「満タンになってしまうとメーカー修理が必要」であった。
しかし「交換式メンテナンスボックス」を搭載したモデルだと、長い年月使用し「廃インク液が一杯」になってもメンテナンスボックスを取り替えれば、問題なく使い続けられるので経済的だ。
「自宅用にとりあえず一台プリンターが欲しい」というニーズにはぴったりな一台なのである。
EW-052A
また、EW-452Aと比べ「一度にセットできる用紙の枚数」が少なく、最大50枚までしか対応しない。
もしオフィスや事務所等で「一回の印刷枚数が多い」のであれば、前述したEW-452Aの方が賢明であると言える。
なお、使用するインクカートリッジはEW-452Aと共通であるので印刷品質の差はない。「プリンターが必要になったけど、あまり高いモデルは買えない」というニーズに応えたモデルである。
EP-812A
また、「L版用紙への写真印刷」への高速印刷が可能であり一枚あたり約13秒でカラー写真の印刷が可能だ。(EW-052Aの場合は約74秒/枚)
また、本機は前面給紙トレイを採用しているので普通紙をわざわざ背面に挿す必要がない為、見た目もスッキリしている。
「2019年販売モデルで一番バランスが取れている」と言っても過言でないであろう。
EP-882(AW/AB/AR)
2019年8月1日発売。2019年販売モデルの中で上位モデルである。
ミッドレンジモデルであるEP-812Aの基本機能を踏まえた上で、更に「交換式メンテナンスボックス」に対応し「長い期間使用すること」を想定している。
また、「タッチ対応4.3型ワイドモニター」を採用しているので「プリンターだけで写真のトリミング(切り抜き)」などの操作が直感的に行える。
搭載されるインクカートリッジ数はEP-812Aと同じ「染料系6色(独立)」ではあるが、「増量インクカートリッジ」も選べる為、「一枚あたりの印刷に必要なインク代」のコストを下げることが出来る。
本体カラーも「ホワイト/ブラック/レッド」の3色から選ぶことができるので「写真印刷をよく行う家庭用」としては一番オススメしたい。
番外編
ちょっと番外編の機種も紹介していこう。
EW-M752T
「エコ」という名前に恥ないコストパフォーマンスの良さで、「L版用紙へカラー印刷」する場合なんと「約8.6円/枚」という驚異のコスト。(EP-882シリーズだと約20.6円/枚)
4色染料系インクタンクに加え、顔料系ブラックインクタンクも搭載しているので「文章もカラー印刷もとにかく毎日印刷する」という家庭やオフィスには私はこちらをオススメしたい。
まとめ
冒頭で触れた「プリンターの選び方」について、プリンターの基本機能からデザインまで触れてきたが、「写真はエプソン、文章はキヤノン」という点は今でも同じ。
しかし、詳しく機能を調べていくと各メーカーにおいて細かな違いがあり非常に興味深い。
エプソンは昔から変わらず写真印刷に重点を置いている。人物や食べ物、風景などの写真で必要とされる「色の表現力」については「色再現度の高い染色インク」を多色使い分けるエプソンに軍杯があがる。
そしてキヤノンは「ハッキリとしたコントラストを再現するため」に「ブラックだけで染料系と顔料系の2色を搭載」したり、「インクジェットの特性を利用」し、「フォトブルーインクで粒状感を少なくし繊細な表現」を可能にするなど、エプソンとは異なった方向性を歩んでいる。
また「プリンター本体のカラーやデザイン」にこだわり、「SNS連携やスマートスピーカー」に対応したりなど「生活の中に溶け込む」という個性的な対応を取っている。
私としては「家族も使用する、リビングに置くプリンター」としてはキヤノンをオススメし、「写真やイラストなどを自室やオフィスで印刷する」ならばエプソンをオススメしたいところ。
生活スタイルに合わせてプリンター選びを行ってみてはいかがだろうか。